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子どもが起こした事故の責任は誰が負う?「監督責任」の基礎知識

皆様、こんにちは。
今回のコラムは、子どもの監督責任に関する情報をお届けします。

 

 


 

 

 

Q:子どもが物を壊した場合、親は「子どものしたことだから」と弁償を拒否できる?

 

 

こんにちは、弁護士の増子です。

 

 

子どもが他人の財産を壊したり、傷つけたりするトラブルは後を絶ちません。

 

 

被害者側が損害賠償を求めたところ、親御さんから「子どものしたことだから」の一点張りで、責任を認めようとしないケースもあります 。

 

 

このような場合、被害者は泣き寝入りするしかないのでしょうか?

 

 

 

 

1. 損害賠償の大前提:「責任能力」

 

 

まず、法律上の「損害賠償」を請求する上で、非常に重要な大前提があります。それは、「責任能力があること」です 。

 

 

責任能力とは、自分の行為の責任を弁識するに足りるだけの知的能力を指します 。交通事故などでの加害者への損害賠償請求に必要な「不法行為」「損害」「故意または過失」「相当因果関係」といった要素のさらに手前に、この責任能力が必要となります。

 

 

逆にいうと、責任能力がない場合、その本人に対して法的な責任を問うことはできません。

 

 

  • 子どもの責任能力:一般的に、概ね12歳〜13歳未満の子どもは責任能力がないとされています。

 

もし、加害者が12歳未満で責任能力がないと判断された場合、確かに子ども本人に請求することは難しいでしょう。しかし、請求できないのは、あくまで「子どもに対して」です。

 

 

 

2. 親が負う「監督責任」とは?

 

 

子ども本人に責任能力がない場合、その損害賠償の責任は親(親権者)に問われます。

 

 

 

民法は、親(親権者)は責任能力がない者を監督する義務を負うと定めています。そして、責任能力がない者が他人に損害を加えた場合、監督義務者(親)がその損害を賠償する義務を負うと定めています(民法714条)。

 

 

 

これは、従業員が何かやったら会社が責任を負う仕組み(使用者責任)に似ています。

 

 

 

したがって、親御さんの「子どものやったことなので」という言い分は、「子どものやったことなので子ども本人には請求できないが、代わりに親に請求できる」というのが、法律上の正しい理解となります。

 

 

 

 

3. 親の反論:「ちゃんと監督していたから責任はない」は通用する?

 

 

親が「自分はちゃんと監督していた」「子どもは予想外の行動をするから防止できない」といった反論をすることもあります。

 

 

 

しかし、そもそも子どもは、大人の想定外の行動をする生き物です。そのため、「予想外の行動をするかもしれない」という前提で監督義務を果たす必要があるとされています。

 

 

 

  • 大人の行動基準ではなく、「子どもの行動」の範囲内に入っている限り、監督義務者(親)が免責される可能性はほとんどないと考えた方が良いでしょう。

 

 

例えば、一般的に立ち入りが禁止されている場所や、子どもが入ってはいけないと一目瞭然の場所に漫然と子どもの立ち入りを許していた場合、監督義務を果たしたという主張は通りません。

 

 

 

 

4.まとめ:泣き寝入りではない!請求の相手を変える

 

 

もし子どもが他人に損害を与えた場合、被害者は必ずしも泣き寝入りする必要はありません。

 

 

  1. 加害者が12歳未満(責任能力なし)の場合、親(監督義務者)に対して損害賠償を請求する。
  2. 親は「予想外の行動だった」といった理由で、責任を免れることは極めて難しい 。

 

 

【補足】中学生以上(責任能力あり)の場合

 

 

もし加害者が中学生以上で責任能力があると判断された場合、子ども本人が直接責任を負うことになります。この場合、資力等の問題もあり、被害者側は請求のハードルが上がります。

 

 

 

この場合にも親に請求できないわけではありませんが、親に請求するには、親自身の過失など別の法律構成が必要となりますので、ぜひ弁護士にご相談ください。