前回は、新型コロナウイルス感染症に対する法務対応について説明しました。
今回は、「資金繰り」に関する対応についてご説明いたします。
※なお、本記事は投稿時点の情報に基づくものになります。
Q. 売上が激減し、資金繰りがとても厳しいです。どのように対応すれば良いでしょうか?
A.
① 資金繰りの把握
まず、資金繰りの実態を把握するために、日繰りの出入金の予定を記録した資金繰り表を作成しましょう。そして、日々更新するなどして、最新のものを手元に置いておきましょう。
② 入りを増やす
【緊急融資】
国や自治体による緊急融資制度や信用保証制度を十分に活用することを検討しましょう。
緊急融資により、手持ち資金が増えれば、資金繰りに余裕ができます。
緊急融資を受けても、将来返せるのか不安だとの声を聞きます。その不安はもっともですが、今の状況は、誰も(世界の首脳たちを含めて)先のことを見越せない異常な状況ですので、事業継続の強い意欲があるのであれば、資金ショートを避けるために、緊急融資を検討されたほうが良いと考えます。
国の最新の施策については、経済産業省のHP(https://www.meti.go.jp/covid-19/)を確認してください。無担保、実質無利子の融資制度が紹介されています。
【雇用調整助成金の活用】
新型コロナウイルスの影響を受ける事業主(全業種)を対象にした助成金であり、事業主が、雇用の維持を図るための休業手当に要した費用を助成する制度です。
助成率の引上げや、書類の事後提出を認めるなどの特例措置がとられています。 従業員の解雇を回避し、従業員に休業手当を支払いつつ、資金繰りへの影響を最小限に抑えるための方法として活用を検討してください。
国の最新の施策については、厚生労働省のHPを確認してください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html
具体的な申請手続については、社会保険労務士等の専門家に相談してみてください。
当事務所が参加している「スペシャリストアライアンス新潟」にも多数の専門家が所属しています。お気軽にお問い合わせください。
③ 出を抑える
【リスケジュール】(借入金の返済猶予)
金融機関に対して、一定の期間、借入金の返済を猶予してもらうことにより、資金繰りを改善させることができます。現在、元利金の返済を行っているが、資金繰りが厳しい場合には、金融機関へ相談してみてください。
なお、リスケジュールは、借入金の元金のみを対象にするのが通常であり、利息については約定どおり支払うことになりますが、今回の事態により、利息の支払いさえ困難な事業者もいることと思われます。
この点に関して、令和2年3月6日付の財務大臣兼金融担当大臣の談話には、公的な各政策金融機関のみならず、民間の金融機関に対しても、「既往債務について、事業者の状況を丁寧にフォローアップしつつ、元本・金利を含めた返済猶予などの条件変更について、迅速かつ柔軟に対応すること。また、この取組状況を報告すること(これについては、財務省より公表する)」を要請しております。
https://www.fsa.go.jp/common/conference/danwa/20200306.html
この談話に法的拘束力があるわけではありませんが、政府の担当大臣による正式な談話であり、実務への影響力はあるものと考えます。
地域の企業を支えることが金融機関の使命でもありますので、利息の支払いすら困難な場合には、上記大臣談話を踏まえ、利息の支払い猶予についても相談してみてください。
また、金融機関がリスケジュールに消極的な場合には、他の様々な要因によることも考えられますので、事業再生に取り組んでいる弁護士などの専門家に相談してみてください。
もちろん当事務所にもぜひご相談ください。
【公租公課】
国税については、国税庁が納税猶予制度を設けました。詳しくは、国税庁のHPを確認してください。
https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/nofu_konnan.htm
納税の猶予には、一定の要件がありますが、要件を充たしていなくても、交渉レベルで納税の猶予が事実上認められることも考えられますので、まずは所轄の税務署に相談してみてください。
また、厚生年金保険料等の納付が困難となった場合の猶予制度があります。詳しくは、日本年金機構のHPを確認してください。 https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/2020/202003/20200304.html
【その他の支払い】
緊急融資、助成金、リスケジュール、公租公課の猶予等の施策を講じても、資金が不足する場合には、商取引上の債務の支払いを止めるなどの対応を検討せざるを得ません。
他方で、商取引上の債務の支払いを止めてしまうと信用不安が生じ、事業価値が毀損してしまうという問題が生じます。
また、手形の決済ができない場合には不渡りになり、同様に信用不安が生じます。
非常時の対応が必要になりますので、このような場合には、事業再生を得意とする弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。
当事務所では、経営者様、法務・総務担当者様の負担を少しでも軽減できるようできる限り支援させていただく所存です。
不安なことがございましたら、ぜひ一度ご相談ください。