皆様、こんにちは。
今回の青山通信は、カスタマーハラスメントへの対応に関する情報をお届けします。
皆様こんにちは。弁護士の若槻です。
近時、特にサービス業や小売業を中心に、顧客等からの暴行、脅迫、ひどい暴言、不当な要求等の著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント)(以下「カスハラ」といいます。)が社会問題になっています。
労働施策総合推進法を受けた厚生労働省の指針では、カスハラに関して、事業主は、以下の取組みを行うことが望ましいと定めています。
(1)相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
(2)被害者への配慮のための取組(被害者のメンタルヘルス不調への相談対応、著しい迷惑行為を行った者に対する対応が必要な場合に一人で対応させない等)
(3)顧客等からの著しい迷惑行為による被害を防止するための取組(マニュアルの作成や研修の実施等)
現在は「望ましい」に留まっていますが、報道によりますと、厚生労働者はカスハラ対策を企業に義務付けるための法改正に向けての検討に入ったとのことです。
顧客等からのクレームは、商品やサービスの内容に対して不満を訴えるものであり、それ自体問題ではなく、商品やサービスの質の向上に繋がりうるものです。
他方で、カスハラは、従業員に過度に精神的ストレスを感じさせ、業務のパフォーマンスを低下させるなど、看過できない影響を及ぼします。また、企業も、対応に要する時間や人員の確保、金銭的損失などが発生します。したがって、企業は、法改正を待たずして、カスハラに対して、従業員や企業自身を守るための対応が求められているといえます。
このような背景を踏まえ、厚生労働省は、企業・団体、労働者に対する実態調査を行ったうえで、2022年に「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を策定しました。
このマニュアルでは、カスハラを想定した事前の準備として、①事業主の基本方針・基本姿勢の明確化、従業員への周知・啓発、②従業員(被害者)のための相談体制の整備、③カスハラへの対応方法、手順の策定、④カスハラへの社内対応ルールの従業員等への教育・研修を推奨しています。また、カスハラが実際に起こった際の対応として、⑤事実関係の正確な確認と事案への対応、⑥従業員への配慮の措置、⑦再発防止のための取組などを推奨しています。
このようにカスハラに関しても、パワーハラスメント等への対応と同様に、事前の準備と事後の適切な対応が重要になります。カスハラに関するトラブルを自社のみで対応しようとすると、現場の従業員に多大な負担がかかるなど困難を伴いますので、必要に応じて、顧問弁護士等に対応を依頼することをお勧めします。