皆様、こんにちは。
今回の青山通信は、テレワーク導入に伴う就業規則の改定に関する情報をお届けします。
皆様こんにちは。
弁護士の栁瀬でございます。
今般の新型コロナウイルス感染拡大に伴い、多くの企業がテレワークを導入しました。緊急事態宣言後には全企業の25%超がテレワークを実施したとの調査もあります。
現在、新型コロナウイルスの新規感染者数は減少傾向にありますが、テレワークには従来型の勤務とは異なる有効性・利便性がありますので、これを機に今後もテレワークを積極的に活用していきたいという企業もあるかと思います。そこで、今回は、テレワークの活用を考えている企業向けに、テレワーク導入に伴う就業規則の改定について解説します。
1 就業規則改定の必要性
まず前提として、テレワークの導入が臨時的であり、かつ、従前の労働条件の範囲内で対応できるという企業であれば、無理に就業規則を改定する必要はありません。他方で、今後もテレワークを活用するのであれば、就業規則の改定をおすすめします。労働基準法89条10号は、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合には就業規則で定めるよう求めていますし、テレワークは従来の就労と異なる部分も多いため、その内容を明確にしておかないと労使紛争の火種になる可能性があります。
2 就業規則改定のポイント
(1)テレワークの目的・場所
例えば、テレワークを利用した在宅勤務を予定している場合は、その旨を就業規則に明記してテレワークの適用範囲を明示するべきです。就業規則に目的・場所が明記されていないと、スマートフォン等を利用したあらゆる活動がモバイル勤務(社外で情報通信機器を利用する業務)に該当してしまう可能性があります。安全衛生やセキュリティの面からしても、テレワークの目的・場所は限定しておくべきでしょう。
(2)テレワークの許可基準
テレワークを実施する際は、業務命令で実施させる場合(業務命令)と、従業員から申請して実施を認める場合(従業員申請)が考えられます。従業員申請の場合は、許可基準を明示するため、就業規則に手続や要件を明記するべきです。安全衛生やセキュリティの面からして、テレワークに適した環境が整っていることを要件とするべきでしょう。セキュリティについては、服務規律でも具体的に規定するべきです。また、テレワークを利用した在宅勤務の場合は、従業員家族のプライベート空間を利用することにもなりますので、「家族の理解」を要件に入れておくことが考えられます。
(3)テレワークの労働時間管理
テレワークでは、正確な労働時間を把握するために従業員の協力が不可欠になります。電話、メール、勤怠管理ツール等で勤務の開始及び終了時間を報告することを就業規則で明記するべきです。さらに、テレワークでは、職場に比べて休憩や中抜けが容易になりますので、そのような場合には事前又は事後に担当者に申し出て許可を得ることを明記するべきです。ウェブ会議システムを常時接続し、リアルタイムで勤務状況を確認する方法も考えられます。
(4)テレワークの給与・手当等
テレワークを利用した在宅勤務の場合、自宅を利用する賃料相当分、通信費、光熱費などが従業員負担になるため、これらの負担を補償するための手当てを付与することが考えられます。在宅勤務では、従業員やその家族のプライベート空間を利用する側面があるため、このような負担感を軽減する意味でも、手当ての付与は積極的に検討した方がよいでしょう。
今回の内容は留意事項のごく一部であり、業務遂行方法の明示や、みなし労働時間制の活用など、他にも検討すべき事項は多くあります。当事務所では、就業規則に関するご相談を受け付けていますので、是非お気軽にご相談ください。