皆様、こんにちは。
今回の青山通信も、相続法改正に関する連続講座をお送りします。
第2回のテーマは「持戻し免除の意思表示の推定」です。
皆様こんにちは。
弁護士の輪倉です。
前回に引き続き、相続法改正についてお知らせいたします。
今回は、今年7月1日に施行された「持戻し免除の意思表示の推定規定」についてです。
具体的には、被相続人の遺産の額に贈与の額を加えたものを相続財産とみなし、特別受益者の相続分から、その者が受けた特別の利益の額を控除した額を相続分とします(民法903条1項)。
したがって、特別受益者の実質的な相続分については、原則として、以下のように算定することになります。
(遺産の額+贈与の額)×(相続分)-(特別受益の額)=(特別受益者の実質的な相続分)
このように特別受益があった場合には、上記のような持戻し計算をして、相続分を算定することになります。しかし、被相続人が「持戻し免除の意思表示」をした場合には、特別受益の持戻し計算をする必要はないため、結果として、特別受益者はより多くの財産を取得することができるようになります。
これは、①婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、②居住用の不動産(建物又はその敷地)を遺贈又は贈与したときは、③被相続人により②の遺贈等(特別受益)の持戻し免除の意思表示があったものと推定するという規定です。
これにより、配偶者は、居住用不動産を取得したうえで、持戻し免除の意思表示がなかった場合と比較して、より多くの財産を取得することができるため、改正前よりも配偶者の生活が保護されることとなります。
ただし、この規定はあくまでも「推定規定」であるため、被相続人が異なる意思表示をしている場合には、適用されないことには注意が必要です。
このように、今回の改正では配偶者を保護するための規定が新設されました。
条文の内容自体はシンプルなものですが、自宅兼店舗のような建物の場合は適用されるのかなどといった問題もあります。
上記のような場合も含めて、相続関係でお困りの場合には、当事務所までお気軽にご相談ください。