皆様、こんにちは。
今回の青山通信も、相続法改正に関する連続講座をお送りします。
第5回のテーマは「遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲」です。
皆様 こんにちは。
弁護士の上遠野です。
今回は、令和元年7月1日から施行されている、「遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲」についてご紹介いたします。
(遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲)
民法第906条の2 遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができる。
2 前項の規定にかかわらず、共同相続人の一人又は数人により同項の財産が処分されたときは、当該共同相続人については、同項の同意を得ることを要しない。
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<遺産分割の基本>
遺産分割の基本的な考え方⇒遺産分割のときに存在する財産を共同相続人で分配する。
共同相続人の一人が遺産分割の前に遺産の処分をした場合の取扱いは?
原則 遺産分割のときに存在する財産を基準に遺産分割を行う。
処分によって共同相続人が得た利益は遺産分割においては考慮しない。
例外 遺産分割時に存在しない財産であっても、共同相続人の全員がこれを遺産分割の対象に含める旨の合意をしたときは、これを遺産分割の対象とする。
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共同相続人全員の合意がない場合、原則に戻り、遺産分割の対象とすることができない。
しかし、遺産分割前に、財産処分を行った共同相続人の同意が得られない場合にまで、当該財産を遺産分割の対象とすることができないのか?不公平ではないか?
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民法第906条の2では、遺産分割前に遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人が処分した場合に、処分をしなかった場合と比べて利得をすることがないように、遺産分割においてこれを調整することを容易にする規律を設けた。
同条1項は、共同相続人全員の同意によって、遺産分割前に処分された財産についても遺産分割の対象財産とすることを認めた。
同条2項は、当該処分をした共同相続人の同意を得ることを要しないとし、当該処分を行ったのが共同相続人の一人である場合には、遺産分割時に処分をした財産を遺産に含めることについて他の共同相続人の同意さえあれば、これを遺産分割の対象として含めることができるとした。
当事務所では、遺産分割に関するご相談にも対応しております。是非お気軽にご相談ください。