皆様、こんにちは。
今回のコラムは、成年後見制度の改正に関する情報をお届けします。
こんにちは、弁護士の吉川です(プロフィールはこちら)。
認知症になるなどして判断能力に問題がある場合、本人の支援をする制度として成年後見制度があり、数多く利用されています。令和8年6月、この成年後見制度に関して、改正法が成立しました。今回は、現行の成年後見制度及び改正後どうなるかについて説明します。
1 現行の成年後見制度
現行の成年後見制度は、大きく分けて「法定後見」と「任意後見」の2つに分かれます。
(1)法定後見
法定後見とは、精神上の障害により既に判断能力(事理を弁識する能力)が低下している人に対し、家庭裁判所が適切な支援者(成年後見人等)を選任する制度です。本人の判断能力の程度に応じて、3つの類型に分かれています。
① 後見
精神上の障害により判断能力を欠く常況にある方に関して、成年後見人が付き、成年後見人には包括的な代理権・取消権が付与されます(日用品の購入など日常生活に関する行為は除きます)。
② 保佐
精神上の障害により判断能力が著しく不十分な方に関して、保佐人が付き、借金や不動産売買、相続などの一定の重要な行為の同意権・取消権が付与されます。本人の同意を得た特定の行為について代理権が付与されることもあります。
③ 補助
精神上の障害により判断能力が不十分な方に関して、補助人が付き、特定の行為に関する同意権・代理権が個別に付与されます。
後見人等は家庭裁判所が本人にとって適切だと思う方を選任しますので、親族が選任されることもありますし、弁護士、司法書士、社会福祉士等の専門職が選任されることもあります。後見人等の報酬は家庭裁判所が決定します。
法定後見は、一度利用を開始すると、本人が判断能力を取り戻すか本人が亡くなるまでの間続きます。
(2)任意後見
任意後見とは、本人が十分な判断能力を持っているうちに、将来判断能力が不十分になったときに備えて信頼できる人(任意後見人)と公証役場で契約を結んでおき、判断能力が不十分になったときにその契約に基づいて援助してもらう制度です。契約は家庭裁判所が任意後見監督人選任の審判をしたときから効力が生じます。
2 現行制度の主な課題
現行制度は以上のとおりですが、現行制度には、「一度制度の利用を開始すると、本人の判断能力が劇的に回復しない限り、原則として亡くなるまでやめることができないこと」、「遺産分割や自宅を売却して介護施設の入居費用に充てるといった特定の目的のために申し立てたとしても、目的達成後も制度が継続すること」といった問題があると言われていました。
3 令和8年6月成立の改正法の主なポイント
そのような中、令和8年6月に成年後見制度に関して改正法が成立しました。改正では、これまでの「一律で硬直化した保護」から、「本人の意思を尊重し、必要な時に必要な分だけ支援する」という柔軟な仕組みへの転換を目指しています。主な改正ポイントとして以下の点が挙げられます。
① 「後見」「保佐」を廃止し、「補助」への一本化(一元化)
現行の「後見・保佐・補助」という3つの区分が廃止され、一律「補助」に一本化されます。 これにより、一律に包括的な代理権を与えるのではなく、「不動産の処分」「遺産分割」など、本人がサポートを必要とする特定の事項についてのみ、個別に同意権や代理権を設定する「オーダーメイド型」の支援へと変わります。
② 「終身制」の廃止と「スポット利用・期間限定利用」の実現
「途中で終われる後見(補助)」が導入されます。 あらかじめ「遺産分割手続きが完了するまで」のように目的や期間を定めて利用することが可能になり、その目的が達成されるなどして保護の必要性がなくなれば、家庭裁判所の判断で制度を終了できるようになります。
③ 本人の意思尊重の明文化
改正法では、補助人が本人の意向を適切な方法で把握し、それを尊重することが法律上、明文で規定されます。
④ 後見人(補助人)の交代・解任事由の追加
これまでは一度選任された後見人を交代させることは極めて困難でした。しかし改正法では、「本人の利益のため特に必要があるとき」という新しい解任・交代事由が新設されます。
⑤ 任意後見の柔軟な利用
現行制度では法定後見が始まると任意後見契約が終了・解除される傾向にありましたが、改正後は「任意後見」と「補助(法定後見)」の併用が可能になります。例えば「日常の金銭管理は信頼できる家族(任意後見人)に任せ、大規模な不動産売却の時だけ専門職の補助人を関与させる」といった柔軟な運用が可能になります。また、家庭裁判所が明らかに任意後見監督人による監督の必要がないと認めるときは、任意後見監督人を選任せず、家庭裁判所が直接監督することが可能となります。
4 今後のスケジュール
改正法は令和8年6月に成立・公布されましたが、実際の施行は「公布から2年6カ月以内」(令和10年頃)になると見込まれています。
